フランス近代御三家 室内楽曲チクルス [室内楽]

ドビュッシーの室内楽チクルスといきたかったのであるが室内楽全集をもってないので、手持ちのドビュッシーの室内楽の入っているCDを集めたら、フランク、フォーレ、ラヴェルの室内楽曲とのカップリングばかりであった。

というわけで、フランス近代作曲家の御三家として、ガブリエル・フォーレ(1845-1924)、クロード・ドビュッシー(1862-1918)、モーリス・ラヴェル(1875-1937)の3人を中心とした室内楽曲チクルスとしておこう。
彼らに先立ってフランスロマン派の大家には、交響曲やヴァイオリン・ソナタの名曲を残したセザール・フランク(1822-1890、厳密にはベルギー出身)もいるが、やはりフランス近代音楽を代表するのはこの3人だと思う。
この3人は互いに影響しあっていたようで、先輩格のフォーレに対して、一匹狼的なドビュッシーが批判や尊敬を示し、フォーレもドビュッシーの先見性を認めて擁護していたようである。
ラヴェルはフォーレを師匠として慕いながらも、フォーレの殻を超えるような作品を残した。
ドビュッシーとラヴェルは印象派とひとくくりにされるが、色合いが異なっている。
ボクの主観では、フォーレがセピア色としたら、ドビュッシーは淡彩、ラヴェルは原色といったイメージである。

  フランス近代ピアノ・トリオ選 
   1.ドビュッシー:ピアノ三重奏曲ト長調
   2.ラヴェル:ピアノ三重奏曲イ短調
   3.フォーレ:ピアノ三重奏曲
      ジャン=ジャック・カントロフ(Vn)
      フィリップ・ミュレ(Vc)
      ジャック・ルヴィエ(Pf)

  ドビュッシー・ラヴェル:弦楽四重奏曲
   1. ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調op.10
   2. ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調
      カルミナ四重奏団

  メニューヒン:ラヴェル・ドビュッシー・フォーレ
   1.ラヴェル:ピアノ三重奏曲イ短調
   2.ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調
   3.ドビュッシー:フルート、ビオラとハープのためのソナタ
   4.フォーレ:アンダンテ
   5.フォーレ:子守唄
      ユーディ・メニューヒン(Vn、Va)
      ガスパール・カサド(Vc)・・・1
      ルイス・ケントナー(Pf)・・・1
      ジェレミー・メニューイン(Pf)・・・4,5
      ジャック・フェヴリエ(Pf)・・・2
      リリー・ラスキーヌ(Hp)・・・3
      ミシェル・デボスト(Fl)・・・3

  カントロフ ラヴェル&ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
   1.ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ
   2.ラヴェル:フォーレの名による子守唄
   3.ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
   4.ラヴェル:ツィガーヌ
      ジャン=ジャック・カントロフ(Vn)
      ジャック・ルビエ(Pf)

  ティボー フランク、フォーレ&ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
   1. ヴァイオリン・ソナタ イ長調(フランク)
   2. ヴァイオリン・ソナタ(ドビュッシー)
   3. 前奏曲第1集~第12曲ミンストレル(ドビュッシー)
   4. ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調op.13(フォーレ)
   5. 子守歌op.16(フォーレ)
      ジャック・ティボー(Vn)
      アルフレッド・コクトー他(pf)

ドビュッシーのピアノ三重奏曲は印象派というよりは、ロマン派的な情熱に満ちた曲である。この作品はフォーレ中期のピアノ四重奏曲第1番、第2番をほうふつとするような曲想で、フランスロマン派音楽の流れといったものを感じさせる。
ラヴェルのピアノ三重奏曲はいかにもラヴェルらしい近代的な感覚の曲であるが、フォーレのピアノ三重奏曲が晩年近くの作品でもあって、ピアノ三重奏曲3作品のなかでは最も新しい感じがする。
フォーレのピアノ三重奏曲には「孤高の境地」を感じさせる厭世観がある。

弦楽四重奏曲もドビュッシー、ラヴェルとも名曲であるが、ラヴェルのほうがピチカートを多用した楽章などがあって、色彩感があって好きである。
フォーレは弟子ラヴェルの四重奏曲が先進過ぎて評価できなかったようである。

メニューヒンは晩年近くの来日公演に行ったことがあった。そのときはベートーヴェンの協奏曲だったが、とても神々しいような演奏であったと記憶している。このフランス近代室内楽のCDでは少々痩せた音で美しい演奏ではない。枯淡の演奏と言うべきか。
ドビュッシー「フルート、ビオラとハープのためのソナタ」でメニューヒンはビオラを弾いて地味に下支えしている。フルートとハープは相性のよい組み合わせだと思う。モーツァルトのフルートとハープの協奏曲のようにとても音色が美しい。

ヴァイオリンソナタはフランク、フォーレ、ドビュッシーのいずれも名曲で優劣つけがたい。
雄弁なフランク、幽玄なドビュッシーもいいが、ボクがいちばん好きな曲はフォーレの第1番で、甘さと情熱、憧れを内に秘めた曲だと思う。
フォーレの室内楽全集は3セット、ヴァイオリンソナタも他に4枚ほど持っているので、いずれじっくりと聴き較べてみたい。

カントロフは親日家で何度も来日公演していて、ボクも一度聴いたことがある。そのときはドビュッシーのソナタを聴いた記憶がある。
とてもテクニシャンで安定した演奏を聴かせるが、ウマすぎてちょっとあざとさを感じることもある。

ティボーはSP時代の名演である。現代の感覚からは録音や演奏スタイルが馴染めないかも知れないが、ボクはティボー節ともいうべきスタイルが好きである。とても歌心に溢れていると思う。フォーレではフランチェスカッティのほうが好きであるが...。

           *      *      *

フォーレのピアノ三重奏曲は以前、大学オケの恩師宅でピアノの音大生といっしょに遊びで弾かせてもらったことがあった。弾いていてとても清澄な気持ちになった。
フォーレの「子守唄」とラヴェルの「フォーレの名による子守唄」は音楽之友社から「フォーレ&ラヴェル 2つの子守歌」のヴァイオリンピースで販売されている。
フォーレの子守唄は学生時代から愛奏してきた。何人かの人にピアノ伴奏してもらったことがあった。今でも暗譜で弾ける唯一の曲である。
ラヴェルの子守唄はGabriel Faure=ソラシレシミミ・ファラソレミと音符に置き換えたメロディーを主題にした曲で、ちょっと無調っぽい響きがする。一度ボクも人前で弾いたことがあったが不評であった(たぶんボクの演奏のせいであると思うが...)。
 
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コメント 10

ひでさん

僕はクラシック初心者なのでよくわかりませんが、
ラヴェルはほんとに多彩な曲を作っているなぁと思います。

同じ人が作った曲とは思えないのに、
あ、これもラヴェルなんだ~いい曲だなぁと思うことがよくあります[嬉しい顔]

僕が先日聴きに行ったオケは、
クープランの墓
ツィガーヌ
左手のためのピアノ協奏曲
ボレロ
でした。

ほんとに同じ人なのかなぁとやっぱり思ったりしながら聴いてました[嬉しい顔]
by ひでさん (2010-02-28 23:29) 

松本ポン太

ひでさん さん、こんばんは。
そうですね。オーケストレーションではラヴェルの右に出る人はいないように思います。
ボクはラヴェルのオーケストラ曲では「ダフニスとクロエ」が最高だと思います。
むかし第1回国民文化祭の出演待ちの舞台袖で早稲オケの「ダフクロ第2組曲」を聴いていてすごかった思い出があります。この世のものとは思えないような音楽でした。
by 松本ポン太 (2010-02-28 23:58) 

松本ポン太

じゅん さん
ジミニスト さん
rhythm♭ さん
まこきち さん
ひでさん さん

[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-03-02 20:58) 

松本ポン太

piano♪さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-03-03 21:00) 

松本ポン太

NANさん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-03-04 19:58) 

松本ポン太

Sarah Mania さん
don さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-03-04 23:34) 

crybaby

勉強になります。
奥が深いから、わかる人には格別なんでしょうね。

入り口を覗く程度ですが、クラッシックは楽しく聴くことが出来るので、大好きです。
by crybaby (2010-03-07 23:58) 

松本ポン太

crybaby さん、こんばんは。
クラシックでもポピュラーでも聴き方・楽しみ方は人それぞれでいいのだと思います。
みなさんそれぞれの人生の中で音楽歴みたいなものがあって、こういう書き込みのなかで垣間見ることができるのは楽しいものです[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-03-09 20:41) 

crybaby

これいいよ、って感じで紹介されたら聴きやすいし、聴き方なんかも色々考えられたりします。
音楽に飢えてるときなんか、他の音楽も聴きたいって思います。
こうやって、色々なお話聞かせていただけるのって素敵なことだと思います。
by crybaby (2010-03-13 23:32) 

松本ポン太

crybaby さん、おはようございます。
正直言って、自分で主観的な感想を書き連ねながらも、あくまでも自己満足に過ぎなくて、ご評価いただけるものとは思っていませんでした。
「素敵」とコメントいただいて、とてもありがたく思いました[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-03-14 09:40) 

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