「ミュージック・オブ・ハート」~映画と実話~ [映画]

なぜか「エルム街の悪夢」のウェス・クレイヴンが監督した

「ミュージック・オブ・ハート」(1999年 アメリカ)

は実話に基づいた音楽映画で有名な作品である。

主演はヴァイオリン教師ロベルタ・ガスパーリ役でメリル・ストリープ、友人の教師役でラテンポップス歌手グロリア・エステファンも共演している。

この映画を先にテレビ放映で観たが、すいぶん以前にNHK-BSで放映されていた実話ドキュメンタリー

"Small Wanders - Roberta Tzavaras and Her East Harlem Violin Program"
(邦題「ハーレムのヴァイオリン教室 ~ロベルタ先生と50人の子どもたちの奇跡~」1995年 アメリカ)

もDVDにダビングしたままだったので、思い立って映画と実話ドキュメンタリーの両方を観た。 


離婚して子ども2人連れのシングルマザーのロベルタは、ヴァイオリン教師の職を求めてニューヨーク・イーストハーレムの公立小学校にやってくる。
ここで非常勤教師として、選択性カリキュラム(課外授業)のヴァイオリンのクラスを受け持つ。
貧しい家庭の子どもたちばかりが相手なので、楽器は彼女が用意した50挺のヴァイオリンを貸し出している。それで最初は50人から始まったのであるが、後には3校で1年間に150人くらいを教えるようになったという。

ロベルタは、集団レッスンで集中できない子や、家庭で練習できない子など問題を抱えた子どもたちに厳しく臨んでいく。イタリア移民のラテン気質からか、熱く、ときには汚い言葉を浴びせて子どもたちをまくし立てる。
遅刻したり楽器を忘れてくる子、やる気のない子には容赦なく「出て行け!」と切り捨てる。
そんなロベルタに応えて、ヴァイオリンを自ら望んだ子どもたちはメキメキと上達していく。
ヴァイオリンの難しさに投げ出そうとする子どもに「難しいからって、やめてはダメ!」と諭しているが、本当は教えることを投げ出しそうになっているロベルタ自身に言っているのだ。

やがて10年も続いたヴァイオリンのクラスが、役所の支援打ち切りにより存続の危機に直面する。
これを友人・教師仲間の計らいでマスコミ報道され、やがてはスターン、パールマンといった大物ヴァイオリニストの協力を得て、カーネギーホールのコンサート開催にまでこぎつげ、多くの支援を集めて乗り切っていくといった話である。

映画ではロベルタの二人の息子との確執やロマンスなども描かれているが、それ以外のエピソードやレッスン風景はドキュメンタリーに忠実である。
メリル・ストリープはこのロベルタ役のためにかなりヴァイオリンのレッスンを積んでいて「弾きぶり」ではなく実際に弾いた音が映画で使われているらしい。難曲ではないにしてもしっかりしたボウイングで実演しているのでヴァイオリン教師の演技にリアリティがある。

ドキュメンタリーでは校長先生が語っていた「芸術は道具ではない」「人間はアーティストなんだ」という言葉は胸にずしりと響いた。

存続の危機に立たされたヴァイオリンプログラムも、その後は「オーパス118財団」となって続いているらしい。


実際にロベルタが使っていたのが日本のヴァイオリン基本教材のスズキ・メソッド(「鈴木鎮一バイオリン指導曲集」)である。
映画でもドキュメンタリーでもこのなかから「キラキラ星変奏曲」「メヌエット(バッハ)」などが演奏され、クライマックスのカーネギーホールではバッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」ニ短調BWV1043 第1楽章が、スターン、パールマン、ベル、五嶋みどり等々著名なヴァイオリニストとともにロベルタとハーレムの子どもたちによって大合奏されている。

このハーレムの子どもたちは、家庭・経済・社会環境の厳しいなかでとてもハングリーに、かつ心から楽しんでヴァイオリンと接している姿が感動的である。
ボクが半ば強制的に始めさせたわが息子のやる気があるのかないのか判然としないような態度とはまったく違う。
映画でも息子がよく練習していたような曲を弾いているだけに、息子がヴァイオリンを始めたての頃は、この映画の熱いロベルタに感化されて、ボクも息子につい熱くレッスンして、よく泣かせていた。今にして思えばそれがよくなかったかもしれない。



"Music of Heart"予告編


その後の「ハーレムのヴァイオリン教室」(2008)


映画より バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」第1楽章


実際の映像 バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」第1楽章

               *    *    *       

ところで手前味噌ながら(何度も貼り付けた動画なので今さらと思われるだろうが)息子とボクの演奏である。


息子とボク バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」第1楽章

妻が夕飯の用意をしている隣で弾いていたので、トントンと包丁の音が入っている。
ボクは気楽にジャージ姿だったが、妻にはだらしないカッコでアップして...とブチブチ言われた。
息子は当時小3であった。
粗い画像のせいか、海外からは二人を「父と子」とは思わずにボクのことを大きいほうのお兄ちゃんくらいに誤解しているようなコメントもあった
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コメント 21

mignon

この映画観ました、でもところどころ記憶がとんでます。
息子さんと一緒にヴァイオリン弾けるなんて羨ましい限りです。素敵ですね。私は相変わらず娘には内緒で先生と一緒にどうやれば楽しく弾いてくれるか作戦を立ててます。
by mignon (2010-06-26 19:46) 

松本ポン太

mignon さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]

ピアノは一人でも完結した演奏ができるのでうらやましいです。
子どもは親が興味を持ってほしいものにはなかなか振り向いてくれず、違ったほうに向こうとします。でも続けてくれるだけうれしいと思って見守っていればいいでしょう[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-26 20:25) 

松本ポン太

えっちゃん さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-26 21:14) 

松本ポン太

マチャ さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-26 21:15) 

クロッカー

息子さんはいたってマイペースに弾いていて,ポン太さんがうまく,それにあわせてあげようとしていて,しばらくして大丈夫かなという感じで,ポン太さんも自分のペースで弾き始め,ふと気づくとずれていて,またあわせてあげようとしていますね.

なんか,ほほえましい感じでよいですね[嬉しい顔]
by クロッカー (2010-06-26 22:53) 

松本ポン太

クロッカーさん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
ご静聴くださりありがとうございました。
そうなんです。伴奏なしで二重奏だけで弾くと、細かいところで走ったり、シンコペーションとの絡みでテンポ見失ってしまって結構難しいんです。
by 松本ポン太 (2010-06-26 23:04) 

松本ポン太

piano♪ さん
[ハート]ありがとうございました[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-26 23:13) 

闇のギャルソン

嫁さんの兄が、一年生の娘(いわゆる『姪』ですね)にセンチとミリの換算ができないと怒ってました。『努力が足りないからだ』ということですが・・・俺も三年後、自分の息子にそう思うのかなぁ[ふらふら]
by 闇のギャルソン (2010-06-27 01:25) 

シュリンパー

ドキュメンタリーも劇映画も見ましたが、自分にとっては珍しく、劇映画のほうがいいと感じた“物語”でした。メリル・ストリープとカーネギーホールでの演奏シーンが良かったからかな。
by シュリンパー (2010-06-27 02:32) 

松本ポン太

まこきち さん
[ハート]ありがとうございました[嬉しい顔]

>>俺も三年後、自分の息子にそう思うのかなぁ

どうしても子どもに、親自身がなりたかった姿を投影してしまいます。
でも子どもは自分とは違う...そのことはわかっているつもりだけれど止められない
それが親子というものではないでしょうか?
by 松本ポン太 (2010-06-27 18:36) 

松本ポン太

シュリンパー さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]

ドキュメンタリーは現実の重みはよくわかるのだけれど、ちょっと冗長に思いました。
もっと短く編集したほうが伝わりやすくなったと思います。
by 松本ポン太 (2010-06-27 18:39) 

松本ポン太

じゅん さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-27 18:40) 

松本ポン太

えくぼ さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-27 23:00) 

松本ポン太

R8 さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-28 12:33) 

松本ポン太

ひでさん さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-30 20:39) 

crybaby

この映画気にはなっているのですが、実はメリルストリーブがどうも苦手で・・・好みじゃないというか・・・・・・なんです。
プラダを着た悪魔は面白かったけど^^

見てみようかと言う気になりました^^

しかし、子供さんとの演奏は素敵です。
普段着な感じも素敵です。
普段着でありながら本格的なのが素敵です。

しかし、松本ポン太様のバイオリンの色、とっても美しいです~~~いい色ですね。
by crybaby (2010-06-30 21:08) 

松本ポン太

crybaby さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]

メリル・ストリーブはあまりそそられる女優さんではないですね。「マディソン郡の橋」でもイーストウッドもじいさん過ぎるけれど、ストリーブもオバサン過ぎて...なんともいえない濡れ場でした。
でもストリーブのヴァイオリンはなかなかのものでした。本物の役者だと思いました。

ボクのヴァイオリンもお褒めいただきありがとうございます。
半世紀モノのセミオールドの色合いです。
by 松本ポン太 (2010-06-30 21:17) 

crybaby

いずれ子に渡るバイオリンですかね???

その時の台詞は、また、凄いの用意されてるんですかね^^
by crybaby (2010-06-30 21:21) 

松本ポン太

息子にもそこそこのバイオリンを買い与えていますが、ボクの棺に入れて燃やされるのはもったいないですから、息子が孫にでも伝えてくれれば...と
by 松本ポン太 (2010-06-30 21:37) 

don

たしかに大きいほうのお兄ちゃんにみえます。
このまえのスーツなら大人にみえますが[犬]
by don (2010-06-30 22:28) 

松本ポン太

don さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
そうなんです、よく歳の離れた兄弟に間違われるんです・・・ってことないか(笑)
by 松本ポン太 (2010-06-30 22:50) 

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