モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」 [協奏曲]

息子が5歳でヴァイオリン教室に通い始めて、最初の数ヶ月はボクが自分で教えるつもりで買った幼児向けのヴァイオリン教本を使っていたが、ほどなく「鈴木バイオリン指導曲集」を中心として、「篠崎バイオリン教本1」や「カイザー ヴァイオリン練習曲1~3」を副教材に使うようになった。
「鈴木バイオリン指導曲集」は1年に1巻ずつくらいのペースで進んでいった。中1になって今年の12月で8巻最後の曲・・・ベラチーニ「コンチェルト ソナタ」が完了した。
そして12月に入ってから9巻である。8巻までは徐々に難度を上げながら有名なピースを曲集としてまとめたエチュードであった。

それが9巻になると、いきなりモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番 K.219「トルコ風」全3楽章(ヨアヒムのカデンツァ付き)である。

先生とボクは「とうとうモーツァルトまで来ましたね」と感慨深く話し合っていた。
先生は「○○クン、○○高校音楽科に入れるんちゃいますか」とも勧められたが、もちろん息子本人もボクもその気はないし(とくに才能もやる気もあるように思えないし...)、音高-音大コースは経済的にもたいへんであるから、手堅く理工系あたりでふつうに進んでくれたらいいと思っている。

来年5月のヴァイオリン教室の発表会の課題曲は、このコンチェルトの第1楽章に決まった。


鈴木バイオリン指導曲集 第9巻(全音楽譜出版社)

         
*          *          *


ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)のヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリンソロ1本のもの)は7曲残っているが、うち第6番、第7番は偽作とされ、第1番~第5番の5曲がモーツァルトの作品として一般的に知られている。

5曲のヴァイオリン協奏曲はいずれも1775年(モーツァルト19歳のとき)の作品で、どれも遜色ない作品だと思う。

第3番、第4番、第5番の3曲がよく演奏され、とくに第5番は第3楽章が、当時流行していたといわれるトルコ風のメロディーの部分を含んでいるので「トルコ風」"Turkish"と呼ばれて親しまれている。この部分はコル・レーニョ"col legno"といって、チェロ・コントラバスのパートが弓の棒の部分で弦をバシバシ叩いて打楽器のような効果をあげていて、トルコ軍の行進の太鼓の音のようにも鞭打つ音のようにも聴こえる。

         
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モーツァルトは最も好きな作曲家の一人なので、この曲もCDは4枚持っている。

(1)フランツ・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)   イェルク・フェルバー指揮   ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団


(2)ジャン=ジャック・カントロフ(ヴァイオリン)   レオポルド・ハーガー指揮   オランダ室内管弦楽団


(3)アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)   サー・コリン・デイヴィス指揮   ロンドン交響楽団


(4)ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)   ニコラウス・アーノンクール指揮   ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


他に「クラシックmp3無料ダウンロード著作権切れ歴史的録音フリー素材の視聴、試聴」サイトから

(5)ジャック・ティボー(ヴァイオリン)   シャルル・ミュンシュ指揮   パリ音楽院管弦楽団

(6)ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)   ジョン・バルビローリ指揮   ロンドン・フィルハーモニック

を聴き比べてみた。

ボクは優柔不断なので、どの演奏も聴いているときは魅力的に感じられて、優劣や好き嫌いを判断するのが難しい。しかし、ウォークマンのプレイリストに入れて立て続けに聴いていると、個性の違いがよくわかった。

(1)ドイツの今は中堅ヴァイオリニストのツィンマーマンが若かりし頃に録音したこの曲は清々しく、几帳面に弾いている。
音は細くも太くもなく、中庸といったところであろうか。
ヨアヒムのカデンツァを省略なしで弾いていて、聴いたなかでは最もスタンダードな演奏である。
難を言えば、バックのオーケストラ演奏がぶっきらぼうな感じで美しく感じられないことであろうか。

(2)カントロフはこのなかではボクが実演で接した唯一のヴァイオリニストである。音は線は細いがスタイリッシュで筋肉質な演奏が魅力である。
このCDではバックのオーケストラは最も美しく効果的にソロを盛り立てていると思った。
ヨアヒムのカデンツァを若干省略しているところがある。
第3楽章「トルコ風」のところは、低弦のコル・レーニョをビシバシ叩いていて、ソロは畳み掛けるようなテンポでスリリングである。

(3)グリュミオーは太めのねっとりした美音で流麗に色っぽく弾いている。
ヨアヒムのカデンツァをかなり省略したり、変えたりしている。
大編成?のオケがちょっと重たく感じられるのが残念であるが、一昔前のスタンダードと思う。

(4)クレーメルとアーノンクール/ウィーンフィルの演奏はたいへん個性的で面白いが、スタンダードからはかけ離れている。
装飾音符の弾き方などソロもオケもふつうとは違うし、ウィーンフィルの美しい響きをわざとゴツゴツしたアーティキュレーションで演奏させている。
クレーメルは変幻自在で剃刀のような鋭い切れ味の演奏である。
カデンツァはレビン作、ヨアヒムに慣れた耳にも違和感はない。

(5)ティボーは録音が悪くて音が痩せて聴こえるが、ティボー節ともいえるポルタメントや細かいビブラートに暖かい人柄を感じる。まったりとした柔らかな音楽である。

(6)ハイフェッツのは意外と録音が良好。現在ではあり得ないほどロマンティックに緩急をつけているが、どこか冷ややかに計算された演奏に感じられる。


YouTubeでは有名曲だけにたくさんあるが、まずはボクの好きなティボー。


ティボー/ミンシュによる第1楽章


アンネ・ゾフィー・ムターの弾き振りによる協奏曲全集の演奏はCD、DVDでも話題になっていたし、NHK-BSでも放映されてちゃんと録画を残している。YouTubeでは音質・画質が劣化しているのが残念である。
どうしてもセクシーなルックスに見とれてしまうが、演奏そのものは濃厚というか男勝りで野太い。とくに第2楽章などは聴いていてゾクゾクするくらいに官能的である。


ムター弾き振りによる第1楽章


ムター弾き振りによる第2楽章(その1)


ムター弾き振りによる第2楽章(その2)


ムター弾き振りによる第3楽章

         
*          *          *


≪練習日誌≫

ボク自身はというと「新しいバイオリン教本」を何巻かやった後、ヘンデルのソナタをやって、次にモーツァルトのソナタをやろうとしたときにレッスンを止めてしまっていた。
その後は、自主的にバッハの無伴奏の一部の曲を練習した以外には、オケの曲ばかり練習していて、オケの曲の中で飛ばし弓や発音のテクニックをそれなりに磨いてきた。
だからヴィヴァルディ・バッハなどのバロックコンチェルト以外には、コンチェルトをちゃんとモノにするような練習をやってこなかった。

息子がモーツァルトを練習する機会を活かして、ボク自身もこの曲を練習してみたいと思った。
先週の日曜日は、ちょっとだけ第1楽章の最初のほうを弾いてみた。
ポジションを意識し過ぎないで、ハイポジションの音に「当たり」をつけて音程をとるところなど難しいが、何度かチェレンジするとそれなりに音をとれるようになった。

息子が四苦八苦して練習するのを聴いていると、まだ負けてないなぁと思った。


第1楽章のソロ出だし

第1楽章のソロは「ラ・ド・ミ」の音階で始まる。この単純な3度ずつの上昇は、いろんなヴァイオリニストが渾身の音色で弾き始めるところだ。
ボクも自分なりに精一杯きれいなビブラートをかけて、ゆったりとした音色を出せるよう試してみた。
息子はまだ棒読みのような弾き方しかできていない。
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コメント 20

don

ムターさんのような美女はとくですよね。
高嶋ちさ子や宮本笑里なんかも美女だし。
美女の反対の有名バイオリン奏者が思い浮かばない[犬]
by don (2010-12-26 21:08) 

松本ポン太

T.Spyder さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-12-26 21:43) 

松本ポン太

don さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]

たしかにムターさんや笑里さんは美女ですよね...
一般的によくCD店のJ-クラシックコーナーで売り出されていたり、アイドルヴァイオリニストだったり、ちやほやされている女流奏者は「美女」の方が多いのは事実ですが、必ずしもそうばかりではないですよ。

最近、国際コンクールで優勝したヴァイオリニストもピアニストも「美人○○」と騒がれていましたが、ボクにはそう見えませんでした。たんにボクが面食いなんですかね。
by 松本ポン太 (2010-12-26 23:09) 

闇のギャルソン

わからないなりに最後まで読ませていただきました。
同じ曲なのに、奏者で差異が出るんですね。奥が深いです[嬉しい顔]
by 闇のギャルソン (2010-12-26 23:15) 

松本ポン太

闇のギャルソン さん
コメントありがとうございます[嬉しい顔]

もちろん声(歌)がいちばんハッキリと歌手による違いが明確ですが、器楽ではヴァイオリンは違いがハッキリ出やすいと思います。
ボクにはピアノの違いはわからないではないですが、ヴァイリンほどはハッキリとはわからないです。
by 松本ポン太 (2010-12-26 23:23) 

松本ポン太

マチャ さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-12-26 23:23) 

闇のギャルソン

ご無沙汰しております。本年もよろしくお願いいたします[嬉しい顔]
by 闇のギャルソン (2011-01-01 00:04) 

松本ポン太

仁 さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2011-01-01 09:02) 

松本ポン太

闇のギャルソン さん
こちらこそ、本年もよろしくおねがいします。
by 松本ポン太 (2011-01-01 09:04) 

美豚

親子で同じ楽器を弾けるっていいですね。ヴァイオリンなだけに、生活に「張り」がでそうでうらやましいです。
それにしても、発表会でコンチェルトとはすごいですね。
僕はピアノを習っていましたが、コンチェルトを発表会で弾く子は見たことがありません。コンチェルトはあくまで、コンクールで優勝した人しか弾けないものというイメージが強いのです。
by 美豚 (2011-01-03 21:14) 

松本ポン太

美豚さん
[ハート]ありがとうございました[嬉しい顔]

「鈴木バイオリン指導曲集」は9巻でモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番、そして10巻は同じく第4番で完了します。
その後の教材は教師の選択次第のようです。
一般的にはその後は、メンデルスゾーンやブルッフのコンチェルトが中心になるようです。
by 松本ポン太 (2011-01-04 13:51) 

松本ポン太

砕牙さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2011-01-06 22:40) 

ひでさん

息子さんは理系にですか。
なんだか惜しいような気もしますが、もし経済的に余裕があって音大に行ったとしてもそのあと苦労している人は沢山いますよね[飛び散る汗][飛び散る汗]

それにしてもモーツァルトを演奏ってスゴいです~~頑張ってください(^o^)/

あ、明けましておめでとうございます[ひらめき]
by ひでさん (2011-01-08 12:59) 

松本ポン太

ひでさん さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
=====
モーツァルトを演奏ってスゴいです~~
=====
かつてアマオケのコンマスだった方はふつうの営業職なのにパガニーニのカプルスをバリバリに弾いておられました。モーツァルトくらいで驚いていられません。
息子とボクのモーツァルトの進捗状況は少しずつレポートしようと思っています。
by 松本ポン太 (2011-01-08 13:08) 

クロッカー

この曲は好きな曲の一つです.私も(3)のグリュミオーと(4)のクレメルを持っています.それとレヴューにあるムター弾き振りに加えて,デュメイ弾き振り/ザルツブルク・カメラータ・アカデミカの計4枚を持っています.
グリュミオーとクレメルに関してはポン太さんの仰るとおりですね.ただし,クレメルの4番はよいですね.デュメイはどうでしたかね,憶えていません(笑).音源だけなので,今度聞き直しますね.

それで,私はムターを愛聴しています.ゾクゾクというのはその通りですね.まさに女帝という感じでしょうか[嬉しい顔]
by クロッカー (2011-01-12 16:01) 

松本ポン太

クロッカーさん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
クロッカーさんにも共感いただいて嬉しいです。
ムターの貫禄はまさしく「女帝」ですね。
by 松本ポン太 (2011-01-16 08:50) 

松本ポン太

じゅんさん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2011-01-16 08:51) 

松本ポン太

rhythm♭さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2011-01-25 18:54) 

松本ポン太

taka さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2011-02-12 20:29) 

松本ポン太

かずさん☆ さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2011-02-12 22:59) 

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