「船に乗れ!Ⅱ ~独奏~」 [本]

この連休は結局、5月1日と5日の2日間しか休めなかった。
出荷前の装置の仕上げに掛かりきりだったので、連休の醍醐味を味わうどころか、ふだん以上にきつかった気がする。

それでも、5月1日は息子のヴァイオリン教室の発表会に行くことができて、実家の母(息子の祖母)も招待して、ちょっとばかりは親孝行らしいこともできた。
本来ならば息子のヴァイオリン演奏の動画をアップして記事にしたいところであったが、息子はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番という大曲に負けてしまって撃沈! 暗譜が真っ白になってピアノ伴奏だけが流れていく...今までの発表会にはなく可哀想な結末だった。父親としても呆然とする息子を前にして辛かったので、これ以上は触れないでおこう。

発表会の後は母も連れて家族全員で湖岸道路を少しドライブしてから日帰り温泉にも行って、休日らしい1日を楽しんだ。


連休のちょうど1週間前は、群馬への出張の行き帰りの新幹線の中で藤谷治 作「船に乗れ!Ⅱ ~独奏~」(ポプラ文庫ピュアフル)を読み終えた(今はⅢ巻を読んでいる)。
前にも紹介したⅠ巻では、チェロ専攻の音高1年生の津島サトルの希望にあふれる活き活きとした学園生活が明るく描かれていた。
Ⅱ巻ではサトルのラヴロマンスに焦点が当てられるが、やがて音高2年生になって、それが可哀想な展開になってしまう。

そういえばⅠ巻のプロローグに

 ボーイング747に乗っていたら「ノルウェイの森」がながれてきたわけでもない(引用)

と書かれていたのを深い意味もなく読み過ごしていたが、Ⅱ巻に到って納得した。
「ノルウェイの森」さながらに悲劇的なわけではないが、Ⅱ巻の終わりのほうはサトルの暗く屈折した心境の変化に読むのが辛くなってきた。それでも読ませるところは作者の自伝的作品らしく強い説得力が込められていたからにほかならないだろう。

船に乗れⅡ.jpg


Ⅱ巻でもクラシック名曲が関わってくる。


サトルがモーツァルトの歌劇「魔笛」公演のタダ券を手に入れて彼女をデートに誘ったときのロマンティックな楽曲解説が印象的である。
「魔笛」の主人公タミーノとパミーナが「炎の試練」と「水の試練」を乗り越えていく場面・・・これをサトルが自分たちの恋愛に重ねようとしているようにも思える。


モーツァルト:歌劇「魔笛」第2幕より「炎と水の試練」の場面


サトルの友人・フルーティストの伊藤くんの発表会のバッハのフルート・ソナタ・・・ここではサトルがチェンバロ以外に伴奏に加わるチェロでアンサンブル組んだ。


J.S.バッハ:フルート・ソナタ イ長調 BWV1032 (1/2)


J.S.バッハ:フルート・ソナタ イ長調 BWV1032 (2/2)
エメニエル・パユ(フルート)


サトルがチェロのレッスンで取り組む課題曲の1つがフォーレの「エレジー」。ボクも大好きな曲で、ヴァイオリンで練習したこともある。哀愁の漂う曲だ。


フォーレ:「エレジー」
ジャクリーヌ・デュ・プレ(チェロ)


2年生になってからは、音高オケでサトルがチェロトップを弾くようになって、課題曲がリストの交響詩「前奏曲(プレリュード)」だった。この曲の難度の高さにオケのメンバーは辟易する。
大編成のアマオケでもよく取り上げられる曲で、ボクは弾いたことはないが聴き馴染みのある曲である。


リスト:交響詩「前奏曲(プレリュード)」 1/2


リスト:交響詩「前奏曲(プレリュード)」 2/2
ダニエル・バレンボイム指揮 ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団 


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コメント 12

yukihiro

ダニエル・バレンボイムのCD買いました。
ショパンのピアノ協奏曲1番&2番です。
ピアニストとしてのCDも楽しみがあります。

by yukihiro (2011-05-06 19:12) 

don

こんばんは!
ぼくは甘い父親ですが、ほんとは多くの失敗させたほうが成長する
のだと思います。

そういう意味では、素敵な経験されたのだと思います。
親はヒヤヒヤだったでしょうけど^^

魔笛、こんどじっくり聞きにきます。
by don (2011-05-06 22:52) 

松本ポン太

yukihiro さん、おはようございます。
テキトーにバレンボイムのYouTube動画を貼り付けましたが、ボクがバレンボイムで持っているCDはモーツァルトのピアノ協奏曲No.20&26の弾き振りとワーグナー序曲集だけで、あまり聴いてなかったです。
そういえばテキトーに選んだ「エレジー」のデュ・プレはバレンボイムとかつて結婚していたんですよね。
by 松本ポン太 (2011-05-07 09:59) 

松本ポン太

don さん、おはようございます。
失敗してイヤになるか、乗り越えていけるか難しいところですね。
子どもでも部下でも、できるだけ成功体験を積ませてあげたいと思うのですが、世の中は思うようにはいかないことが多いので、失敗を乗り越える力強さをつけてもらうことも必要ですよね。
by 松本ポン太 (2011-05-07 10:04) 

クロッカー

息子さん可哀想に・・・. これにめげずに奮起して欲しいですね.ほんとに

バレンボイムの前奏曲,意外によい演奏ですね.カラヤンなどで聴いていましたが,この演奏はロマンチックですね.
by クロッカー (2011-05-07 21:23) 

COPP(コップ)

失敗なら誰にもありますよ。
自己嫌悪との繰り返しですが、解決するのも、本人です。

私はベートーヴェンの32番のソナタの第一楽章の再現部で2秒ほどとまったことがあります・・って自慢じゃないですが。
神戸の国際会館で・・とほほ。

小さなミスならしょっちゅう。
by COPP(コップ) (2011-05-07 23:17) 

松本ポン太

クロッカー さん、こんばんは。
息子は今はヴァイオリンよりも部活の陸上短距離「命」になってますので、難しそうですね。
来年は無難な選曲になると思います。
by 松本ポン太 (2011-05-08 20:50) 

松本ポン太

COPP(コップ)さん、こんばんは。
そうですよね。誰でも失敗はあるのですが、大きなミスはキツイですね。
by 松本ポン太 (2011-05-08 21:08) 

クロッカー

足も速くて,ヴァイオリンも弾けて多才ですね(^^)
by クロッカー (2011-05-08 22:34) 

mignon

私は4月に娘のピアノの発表会がありました。
腕前のほうはまあキャリアからしてもそれなりですが、女の子の場合、ドレス選びから当日のヘアスタイルまで私がやるので別の意味で大変です。
by mignon (2011-05-11 01:12) 

松本ポン太

クロッカー さん、おはようございます。
多才?・・・う~ん。息子はボクと違ってマッチョな「脳ミソ=筋肉」みたいになりつつあって、音楽性には乏しいようです。
by 松本ポン太 (2011-05-14 08:26) 

松本ポン太

mignon さん、おはようございます。
息子のヴァイオリン教室の発表会は田舎の公民館でこじんまりやっていて、普段着や制服が多いです。女の子はドレスアップしてる子もいますね。
by 松本ポン太 (2011-05-14 08:30) 

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