モーリン・マクガヴァン、ガーシュウィンを歌う [ポップス]

前回のヒラリー・コールで引き合いに出してしまったので、久しぶりにモウリーン・マクガヴァンを聴いてみた。




http://www.hmv.co.jp/product/detail/56022[モーリン・マクガヴァン、ガーシュウィンを歌う
Naughty Baby ~ Maureen McGovern sings Gershwin]

1 [Applause]
2 Stiff Upper Lip
3 Things Are Looking Up
4 (I've Got) Beginner's Luck
5 How Long Has This Been Going On?
6 By Strauss
7 Naughty Baby
8 Love Walked In
9 Embraceable You
10 Corner of Heaven With You
11 Somebody Loves Me
12 Little Jazz Bird
13 My Man's Gone Now
14 Porgy, I Is Your Woman (Bess, You Is My Woman)
15 The Man I Love
16 Piano Prelude I
17 Summertime
18 Strike up the Band
19 Fascinating Rhythm
20 Clap Yo' Hands
21 They Can't Take That Away from Me
22 'S Wonderful
23 They All Laughed
24 I Got Rhythm
25 Love Is Here to Stay/Of Thee I Sing

ライヴ録音(1988.11.20 ニューヨーク、クリントン・スタジオ)


ボクが持っているモウリーン・マクガヴァンの数少ないCDの中でもっともお気に入りのCDである。
ガーシュウィン作品が好きな人、ミュージカルやスタンダードナンバー、女性ジャズヴォーカルが好きな人にもお奨めのCDである。

それと、ガーシュウィンはフォーレやモーツァルトとならんで、ボクにとっての3大作曲家、これにバッハを加えて4大作曲家という思い入れがある。


アメリカの偉大な作曲家ジョージ・ガーシュウィン(1898-1937)はもともとポピュラー音楽のソングライターとしてたくさんのヒット作を飛ばしていた。現代音楽の実験と称されたコンサートに「ラプソディー・イン・ブルー」を発表してから、一躍、クラシック作曲家としてもキャリアを積むようになった。
「ラプソディー・イン・ブルー」はグローフェにオーケストレーションを頼ったが、後にガーシュウィン自身も音楽の研鑽を積んで、ヘ調のピアノ協奏曲からはオーケストレーションも含んだ作曲を行うようになった。
クラシック作品としては

  ラプソディー・イン・ブルー (1924年、26歳)
  ピアノ協奏曲ヘ調 (1925年、27歳)
  パリのアメリカ人 (1928年、30歳)
  キューバ序曲 (1932年、34歳)
  歌劇「ポーギーとベス」 (1935年、37歳)

が有名である。いずれはそのあたりも記事に書きたいとは思っている。

でもガーシュウィンの本質は数多くのポピュラーソングにあると思う。
一般のクラシック作曲家の「歌曲」「声楽曲」くらいの位置づけである。ピアノやヴァイオリンなど器楽用に編曲された名曲もある。

ガーシュウィンの「歌曲」はジャズヴォーカルのアルバム中でよく取り上げられているが、ソングブックとしてまとまったものではエラ・フィッツジェラルドの3枚組CD "Ella Fitzgerald sings the George and Ira Gershwin Song Book" が、資料的な価値もあり、しっとりとした大人の歌を聴かせている。
しかしガーシュウィンばかりたくさん聴くには、エラ・フィッツジェラルドでは一本調子で飽きてしまう。

その点、モウリーン・マクガヴァンのコンサートのライヴCDは、変化に富んでいてすばらしい。
彼女はオリビア・ニュートン=ジョンと同年代で、「ポセイドン・アドヴェンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」などのパニック大作映画のテーマ曲をヒットさせて有名になった歌手である。

音楽的な家庭に育って子どもの頃から歌の才能をしめしていたが、高校を卒業すると秘書の仕事に就きながらアマチュアのフォークバンドで歌っていた。
それがプロデビューしてほどなくして映画の主題歌でヒットチャート上位を飾り、さまざまな音楽賞をとった。
それ以降のヒット作に恵まれず、再び秘書の仕事に戻った。
ところが30代くらいでミュージカル女優として復帰し、オフブロードウェイで「サウンド・オブ・ミュージック」や「魅惑の宵」「王様と私」の主演を果たした。
ステージ活動でも「女性版シナトラ」と評されるまでのエンターテイナーに成長した。


ボクは中学生の頃、映画館で「タワーリング・インフェルノ」を観て、主題歌「愛のテーマ」"We may never love like this again"に魅せられてしまった。
当時のボクはお小遣いのほとんどをプラモデルに費やしていたが、ヴィヴァルディ「四季」、オリビアの「そよ風の誘惑」、それとモウリーンの「タワーリング・インフェルノ~愛のテーマ/わたしの勲章」のLP3枚だけは、お小遣いをやり繰りして買った。
いわば中学生のときからひいきの女性シンガーである。

当時から彼女は実力派シンガーでパワフルだったが、少々荒削りでもあったように思う。
それがミュージカルで活躍してから録音したガーシュウィンでは、驚異的なテクニックや表現力を持った歌手になっていた。

彼女ほど変幻自在に声色を変えたり、幅広い音域を駆使できる歌手はいないと思う。
ときにはしっとり、あるいは可憐であったり、繊細、パワフル、ノイジー、ファルセット、コロラトゥーラ...さまざまな表情や発声を使い分けている。

だからこのガーシュウィンのライヴでも、曲の持ち味に加え、表現の幅が広いのでまったく飽きさせることがない。

このアルバムでは"Embraceable You"、"Somebody Loves Me"、"The Man I Love"などのスタンダードナンバーに加え、"Strike up the Band"から"I Got Rhythm"に至るメロデーが圧巻である。
コロラトゥーラで「こうもり」の間奏を聴かせる"By Strauss"やオペラチックに歌う「ポーギーとベス」から"Porgy, I Is Your Woman"も感動的である。
ほんの一部だけであるがご本人のサイトで試聴できる。


YouTubeでは同じコンサートの"Little Jazz Bird"だけアップされていた。
ファルセットで歌うスキャットが美しい。
若い頃は「美人女性シンガー」としても売り出されていたが、動画ではその面影が薄れてしまってすっかりオバサンになっているのは残念である。


Little Jazz Bird


「ポーギーとベス」から3曲を歌ったコンサートでは、黒人バリトン歌手ジュビラント・サイクスとデュエットした"Porgy, I Is Your Woman (Bess, You Is My Woman)"もすばらしい。本来は黒人キャストで歌われるオペラなので視覚的な違和感が残るのはやむを得ないが、胸が熱くなる歌唱である。


歌劇「ポーギーとベス」より3曲
  I Got Plenty O'Nuttin'
  Bess, You Is My Woman
  Oh Lawd, I'm On My Way


バッハを歌った動画ではエンターテイナーとしての面目躍如である。


Maureen sings Bach


1934年のフレッド・アステア主演映画「コンチネンタル」の主題歌は、当時を偲んでレトロ調に録音していて楽しい。


The Continental


若い頃の映画音楽主題歌も懐かしい。


映画「ポセイドン・アドヴェンチャー」より「モーニング・アフター」


映画「タワーリング・インフェルノ」より
  "We may never love like this again "
  モウリーン本人の出演・歌唱シーン


映画「スーパーマン」より"Can you read my mind "
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