ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」 [協奏曲]

ボクはちゃんと音感教育を受けてきたわけではないので、しっかりとした調性感は持っていない。
でもヴァイオリンを弾くときのウォーミングアップではハ長調の音階練習(ピアノでいう白鍵の音階)と、これから練習する曲の調の音階練習くらいは欠かせないが、どうも「移動ド唱法」的な感覚のままである。

しっかりと音感を磨かれた方は、調ごとに異なった「色」が見えると言われる。ボクにはどうしても理解できない感覚である。
いっぽう調性感を身につけた方で、近代音楽以降の調性が崩れてきたような音楽を受け入れるのに抵抗があると言われる方もいた。ボクは少々の転調や無調っぽいメロディーがあっても聴く分にはさほど抵抗はない。弾くときは臨時記号がいっぱいあると、頭が混乱したりシフティングに戸惑って辟易するが...

しかし、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルンあたりの「無調」とか「12音技法」の音楽とよばれるもの、いわゆる「前衛音楽」らしい「現代音楽」はなかなか聴き辛いものがある(それらは21世紀にもなって、もはや「前衛」でも「現代」でもないれっきとした「クラシック」であろうが...)。
メロディーとして耳に入って来ない。青白い音響のように聴こえるのである(そういう面では「色」が見えているのであろうか?)。

オーストリア~ウィーンの作曲家アルバン・ベルク(1885-1935)は、「現代音楽の父」とも言うべきアルノルト・シェーンベルク(1874-1951)の弟子で、同じく弟子だったアントン・ヴェーベルン(1883-1945)とともに「新ウィーン楽派」を築いた作曲家である。
あくまでもボクの主観であるが、ドビュッシー/ラヴェルがモネ/マネらの「印象派」の絵画に喩えられるのに対して、シェーンベルク/ベルク/ウェーベルンはクリムト/シーレらの「ウィーン分離派」に喩えられるように思う。
シェーンベルクの後期ロマン派らしい甘美な部分にクリムト絵画のような「なまめかさ」を感じるとともに、新ウィーン楽派の音楽に退廃的・破滅的な「美」を感じるのである。


http://www.amazon.com/Violin-Concerto-Berg/dp/B00000DNP8/ref=cm_lmf_tit_17[  ベルク&ストラヴィンスキー ヴァイオリン協奏曲
  ・ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
  ・ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
  ・ラヴェル:ツィガーヌ
    フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)
    ジャンルイジ・ジェルメッティ指揮
    シュトゥットガルト放送交響楽団]


モーツァルトのヴァイリンソナタの鮮烈な演奏を聴いて以来、ドイツの中堅ヴァイオリニスト~フランク・ペーター・ツィンマーマンが好きである。
その流れで10数年前に買った「ベルク&ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲」のCDであるが、そのときはまだベルクの音楽には馴染めなかった。ストラヴィンスキーもバレエ音楽三部作と「プルチネルラ」は聴いていたが、それ以外は受け付けなかったので、聴きなおすことのないCDであった。

最近はブーレーズでモーツァルトの「13管楽器のセレナーデ」とカップリングされたベルクの「ピアノ、ヴァイオリンと13管楽器のための室内協奏曲」のCDを聴くようになったり、ドビュッシーやラヴェルの管弦楽曲全集を聴いていると少しばかり無調のメロディーが出てきて、そういうものに馴染んできたようである。
それで、このCDも久しぶりにウォーキングの「ながら」で聴いているとけっこう耳にすんなり入って来た。

このCDはベルク-ストラヴィンスキー-ラヴェルと聴き進むにつれて聴きやすく馴染みやすくなる。
ベルクのインパクトがいちばん強いが、逆の順番で聴いたほうがベルクもより聴きやすいようである。

ベルクのヴァイオリン協奏曲(1935年)には「ある天使の思い出に」と副題がついている。マーラーの未亡人であったアルマ・マーラーが再婚後に生んだ娘・・・18歳のマノン・グロビウスが小児麻痺で亡くなり、これを悲しんで着手したといわれる。

第1楽章(Andante、Allegretto)冒頭は、ヴァイオリンの開放弦4弦による(G-D-A-E-E-A-D-G、ソ-レ-ラ-ミ-ミ-ラ-レ-ソ)のアルペジオをテーマに穏やかに始まるが、その後の展開でも常に悲しみ・不安に包まれた暗い雰囲気である。ときおり現れる伴奏音形が美しい。
わかりやすいメロディーはないので、この先どう展開するかわからないまま粛々と音楽が進んでいく。
独奏ヴァイオリンはとらえどころのないメロディーではあるが、ツィンマーマンのヴァイオリンの音色が美しく、その背後で断片的にオーケストラが激しく盛り上がったり、美しく響いている。

第2楽章(Allegro、Adagio)は、Allegroで激しいオーケストラ全奏で始まった直後に、ヴァイオリンの苦痛に歪んだような、うめき声のような演奏が続く。後半はAdagioにテンポを落としてけだるい曲想が続くが、徐々に晴れ間が広がってきたような清涼な響きになり、フィナーレはアルペジオで上昇した後の長々と続く終止音のロングトーンで安らかに終わる。


≪YouTube動画≫

フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)
アラン・ギルバート指揮 NHK交響楽団
ベルク:ヴァイオリン協奏曲


第1楽章(1/2)


第1楽章(2/2)


第2楽章(1/2)


第2楽章(2/2)


こちらを好まれる方もいるだろう...

諏訪内晶子(ヴァイオリン)
ピエール・ブーレーズ指揮 
グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラ
ベルク:ヴァイオリン協奏曲


第1楽章


第2楽章(1/2)


第2楽章(2/2)
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