息子とボクのヴァイオリン [ヴァイオリン]

1週間前、ヴァイオリン教室にクロサワ楽器の営業マンがヴァイオリン5台を持ってきて、その中から息子の4/4サイズ(レギュラーサイズ)のヴァイオリンを選んだ。
息子は今年になってから3/4サイズの分数ヴァイオリンが小さくなって、ボクのヴァイオリンでつないでいたが、5月の発表会を前に何としても買ってやりたいと思っていたのだ。

息子、ボク、先生と3人で弾き比べて、ドイツ製カールヘフナー2台、ブルガリア製ソフィア2台、ルーマニア製グリガ1台の中から、ソフィア・アルチスタという新作ヴァイオリンを買った。
カールヘフナーは音量が出るが音質が硬かった。グリガは鼻にかかったような色気のある音色であったがクセが強い。ソフィア2台は素直で柔らかい音色であったが、そのなかでもよく鳴るほうの楽器を選んだ。
それから一週間後、昨日のレッスンでは息子がエックレスのソナタを先生のピアノ伴奏で弾くのを聴いていて、いい音色で鳴っていたので安心した。

クロサワ楽器店は東京の大手楽器商であるが、大阪の営業マンが車であちこち走り回っているらしい。
映画「おくりびと」の縁で本木雅弘さんもこの営業マンから実際にソフィアのチェロを購入したと聞いた。

息子のヴァイオリンはボクのセミオールドより音量的にはよく鳴る。新作にしては音色もそこそこまろやかで悪くない。
ただ直接弾いている耳元では、ボクの楽器のほうが年季の入った甘い音色がするみたいだ。

ボクのヴァイオリンは学生のときにバイトで貯めたお金をありったけはたいて買ったセミオールドの楽器である。
ヘタな大学オケでも弦楽器奏者はみんなそこそこのセミオールドの楽器を持っていた。
ボクは大学の先輩に紹介された天下茶屋のとある楽器店で購入した。
その楽器店はタバコや洗剤など日用品も置いてあるような店で、学校教材用の楽器も置いてあってかろうじて楽器店とわかるような店で、ちょっと胡散臭い印象であった。
奥に入るとヴァイオリン、チェロ、コントラバスなどが所狭しと置いてあった。
そこのおっちゃんが予算に見合ったセミオールドのヴァイオリン2本を出してくれた。1本はフランス製40年モノでちょっと予算を超えた。もう1本はラベルがはがれていて素性はわからないがドイツ製の25年モノであった。フランス製はちょっと枯れたような音色、ドイツ製はわりと素直な音色で、おっちゃんに「この楽器はラベルはないけど値打ちあるでえ~」と勧められるがままに後者の「名無しヴァイオリン」を選んだ。

それからボクは四半世紀あまりこの楽器を弾いてきた。
この「名無しヴァイオリン」はおっちゃんの言うとおりだとすれば半世紀モノになったのだろう。
あまり音量は出ないが、甘い音色で周りの人の評判はよいようである。
大編成オケでうるさい曲を弾くときは、音色よりも音量を要求されるのでチカラ任せにガツガツ弾いて、音がつぶれてしまうのが難点である。
いつも音量の出る楽器に買い換えたいと思いながらも、愛着のある楽器を手放せないまま今日に到った。
自分でも魂柱の調整や修理を試みてきた。弓はやや重めのモノを選んで吸い付くようなボウイングを工夫してきた。弦も楽器の特性に合うモノを試行錯誤した。
数年前に高槻のヴァイオリン工房で調整してもらってから、音量もマシになったようだ。
オケで弾いていても「ポン太さん、大きい音鳴らしますね」と言われるようになった。

息子にはもっと楽に鳴らせる楽器を与えたいと思ってきて、ようやくその思いを果たせた。
息子のヴァイオリン演奏は無機質に聴こえて表情に乏しいのであるが、これを機により音楽的な演奏ができるようになればと願っている。



上:ボクのヴァイオリン
下:息子のソフィア・アルチスタ




息子の分数ヴァイオリンとボクのヴァイオリン
(左から)1/4、1/2、3/4、4/4
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闇のギャルソン

父から子へ、伝えるものがあるって、カッコいいですね[嬉しい顔]。俺が息子に伝えられるもの、それは・・・落ち着きのない性格[落胆した顔]
by 闇のギャルソン (2010-04-19 22:05) 

ひでさん

ひゃあ~これだけヴァイオリンが並ぶとすばらしい光景ですねぇ~[ぴかぴか]

僕のはカールヘフナーなんですが、音が硬いというのはわかります。
ハッキリした音で弾きごたえはあるのですが柔らかさはないです。

レッスンの先生の楽器はとってもクラシカルな柔らかい音がするなぁ~といつも感じていたりします。


僕が勝手に思うだけで申し訳ないのですが、
息子さんはかなりレベルの高いところまでいかれているようなので、
息子さんの演奏の表情に「色」を出すには、目標の演奏家がいればいいような気がします。
こんな人みたいに弾きたいとか。

ハハ、ちょっと感覚でしゃべっちゃいました、すみませんf^_^;
by ひでさん (2010-04-19 22:33) 

one-life2008

松本ポンタさん、コメントありがとうございます。
ポンタさんの時は、ご自身で、アルバイトして買われて、息子さんの時には、買ってあげる。
楽器の演奏能力を考えると、買い与えるほうが良いです。
また、自分でアルバイト出来るまで待たせて、息子さんにアルバイトをさせてから、息子さんに買わせるという道もあります。
この場合は、演奏能力を身につけにくくは、なってしまいますね。
僕は、高校時代、アルトサックスが欲しかったのですが、買ってもらえず、中年になってから、自分で買いました。
アルトサックスが買えなかった僕は、一枚二円のルーズリーフで、作詞を練習していく道を歩きました。
そうした中で、有名ミュージシャンから目をかけられる、作詞能力になった時もありました。貴重な経験となりました。
でも、やっぱり、親が楽器を買い与えるほうがいいかなと思います。
良かったですね。
じゅん
by one-life2008 (2010-04-19 22:48) 

松本ポン太

まこきち さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
「伝える」というよりは、押し付けているようなところがあるのですが...。最近、自我が芽生えてきた息子はボクのことを煙たがっているようです[落胆した顔]
by 松本ポン太 (2010-04-19 22:56) 

松本ポン太

ひでさん さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
新作ヴァイオリンの場合は音が完成されていませんので、最初からまろやかな音が出る楽器がよいとは限りません。
現在は硬い音の楽器でも、何十年と弾きこなしていって丸みが出てくるのが本当はよいのだと思います。
ボクの息子はもっと小さい頃は、クレーメルの無伴奏を好んで聴いていましたが、今はクラシックを聴かなくなりました。妻の影響で Backstreet Boys ばかり聴いています。
by 松本ポン太 (2010-04-19 23:04) 

松本ポン太

じゅん さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
本当は与えられるよりも、本人が渇望するくらいのほうが伸びるのだと思います。
でも今はハングリー精神を期待するのは難しいです。
じゅんさんは作詞もアルトサックスも心の支えにして頑張ってこられたのですね。すばらしいことです。
by 松本ポン太 (2010-04-19 23:09) 

ひでさん

なるほどー新作は完成されていないのですねー。
熟成されて良くなっていくというのもあるのですね、というかそういうものですねヴァイオリンというものは。

ん~ここでなんとなく疑問が。
例えばプロの演奏家がヴァイオリンが壊れましたってなったら、
やっぱり次は中古を選ぶのでしょうか??
by ひでさん (2010-04-19 23:37) 

松本ポン太

TAMA さん
シュリンパー さん
かずさん☆ さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-04-20 23:25) 

松本ポン太

ひでさん さん、こんばんは。

ボク自身は正しく理解はしていないですが、ヴァイオリンが熟成されてよくなるというのは二つの意味があるようです。
1つは木材が年数を経ると結晶化して振動特性がよくなる。
もう1つは組み立てられた楽器としてエージングされるようです。
新作でも材質や加工方法によっては、弾きこんでよくなる楽器もあれば、悪くなる楽器もあるようです。おそらく廉価の量産品でプレス加工で作られたような楽器は限界があるでしょう。

プロのヴァイオリニストはたいがいは2台以上の楽器を持っていると思いますので、一方が壊れても直ちに買い替えたりはしないでしょう。
値打ちある楽器ならばかなりの破損状態でも腕のある職人さんにかかれば、表版・裏板・横板をバラバラにはがして、割れた板をくっつけたり、欠損した板を補って、組み立て直すぐらいの修理ができるみたいです。

演奏家の選ぶ楽器はオールドのよい楽器が理想ですが、そこそこのセミオールドを選んだり、新作でも数100万クラスのものもあり、何を選択するかはその人次第でしょう。ウィーンフィルの演奏家も全員が超高価な楽器ばかりを弾いているとは限らないそうです。

参考までに、弦楽器製作者の佐々木朗さんはご自身のサイトでhttp://www.sasakivn.com/werkstatt/report/report.htm[科学的なレポート]を発表されています。
by 松本ポン太 (2010-04-21 00:09) 

piano♪

私は鍵盤楽器なんで、ヴァイオリンの事はよくわかりません[ふらふら]が、
ピアノ同様、ヴァイオリンも一つ一つ音が違うのですね。
うちのピアノはY社ですが、こだわる方は浜松まで行って 実際音を聴いてから購入する人もいるそうです。
私はそこまでしませんでしたが、やはり音は違いますね~♪。
by piano♪ (2010-04-21 00:48) 

one-life2008

作詞って、紙があれば、出来ますので、原価二円くらいなんですよ。あとは頭とのたたかいです。
僕は、デザインも独学で勉強していた時があって、こちらは、紙が八円くらいです。ペインター4とかの安いソフトならば、8000円くらいです。
どうしたら、安く、適切に、勉強できるのかを、考えることも、大事です。
音楽は、やっぱりレッスンを受けたほうがいいですけどね。
by one-life2008 (2010-04-21 23:07) 

松本ポン太

piano♪さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
ボクはピアノの楽器としての音色の違いはよくわからないのですが、弦楽器は比較的わかりやすいと思います。
弦楽器はピアノほどメカニックでないぶん、弾き手の違いもはっきり出てしまいますが...
by 松本ポン太 (2010-04-22 23:04) 

松本ポン太

じゅん さん
コメントありがとうございます。
そうですよね、お金をかけても受身な態度で習いにいくだけでは、本当の創造力は身につかないですよね。
偉大なチェリスト、パブロ・カザルスは習った奏法に飽き足らず自らチェロ奏法を探求して、近代チェロ奏法を築いたといわれています。
そこまで創造的でなくても、レッスンで習ったことを自分なりによくそしゃくして、自分で考えて練習するのが望ましいですね。
パブロ・カザルスといえばこの曲です。

http://www.youtube.com/watch?v=

 
         スペイン・カタロニア民謡 『鳥の歌』
by 松本ポン太 (2010-04-22 23:51) 

don

父子の結びつきも、バイオリンも
うつくしいです[犬]
by don (2010-04-24 16:06) 

ひでさん

>>参考までに、弦楽器製作者の佐々木朗さんはご自身のサイトで科学的なレポートを発表されています。

これは想像を絶するサイトですねぇ~[ぴかぴか][ぴかぴか][ぴかぴか]
僕は一応理数系卒業なんですが、かなり衝撃を受けました。
科学的根拠というか裏付けされた証明のもとに楽器は作られているのですね。
じっくり読みたいと思います[晴れ]

音楽学校に通われた方は楽器の技術的なところも授業であったりするのでしょうか?
by ひでさん (2010-04-24 21:00) 

松本ポン太

don さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]

我が「父子の結びつき」は、息子から言わせたら暑苦しいらしいです[ふらふら]

ヴァイオリンは工芸品としても完成度が高く、曲線美やニス・木目の色合いなど美しいと思います。
by 松本ポン太 (2010-04-24 22:43) 

松本ポン太

ひでさん さん、こんばんは。
佐々木朗さんも理学系出身で、職人修行しながらも科学的な裏づけを探求されたのですね。すごい方だと思います。
ボクの出身大学のオーケストラ部顧問だった教授の電子工学の研究室にも、オケ所属の学生が入ると必ずと言っていいほど楽器の音響解析を卒論テーマにしていました。
ボクはあえて他の研究室に行きましたが...(笑)
by 松本ポン太 (2010-04-24 22:53) 

松本ポン太

ぶんちゃん さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-04-25 11:00) 

松本ポン太

流れ星きらきら☆彡 さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-04-25 19:04) 

ru_ka

はじめまして[嬉しい顔]!
ヴァイオリンは音も大好きですが、形もすごく美しくて見ているだけでα派が飛び出します[目][ハート]♪
松本さんのセミオールドも息子さんの新品もそれぞれ趣があって素敵ですね(^^*)
私のは2008年製の新しい楽器ですが、材料の木材の質にとてもこだわる良い職人さんを抱える工場のお手製で、音はかなり響きます。問題は自分の腕前のみ、という状況です[飛び散る汗]
by ru_ka (2010-04-27 15:10) 

松本ポン太

KSGY さん
うらら さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-04-27 23:32) 

松本ポン太

ru_ka さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
ru_kaさんの楽器はかなりされたのでしょうね。
ボクもhttp://www.d1.dion.ne.jp/~luccio/[高槻のヴァイオリン工房]に自分の楽器を預けて調整している間、「代楽器」を1週間借りて家やオケの練習場で弾いたのですがとても深みのある音でよく鳴る楽器でした。
海外の楽器コンクールに入賞されている工房のご主人 岩井孝夫さんの製作された楽器で100万円と聞いてびっくりしました。
それから新作楽器のよさを見直しました。
by 松本ポン太 (2010-04-27 23:46) 

crybaby

僕のヴァイオリンはエレキなんでめっちゃ安いですが、本物はいろいろあるんですね~~~。
子供さんも素敵なお父さんがいて幸せですよ。
by crybaby (2010-05-05 19:46) 

松本ポン太

crybaby さん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
ふつうのヴァイオリンもピンキリですが、アコースティックば楽器だけにもっと楽にいい音が鳴らせるモノがほしいと欲が出てきます。
by 松本ポン太 (2010-05-05 20:06) 

crybaby

アコースティック・・ギターなんですが3本ありますが、どれも・・好みの音が出ません。
エレキだとエフェクターで変えられるので、まあ、少しは・・・でも腕が無いので・・自分のトーンは絶望しています。
by crybaby (2010-05-05 20:30) 

松本ポン太

crybabyさん
アコースティック・・ギターも欲を言えばお金がかかってたいへんでしょうね。
ヴァイオリンも楽器に依存する部分が少なくないですが、それ以前に自分の技量レベルが問われるので難しいですね。
by 松本ポン太 (2010-05-05 20:38) 

松本ポン太

マチャさん
[ハート]ありがとうございます[嬉しい顔]
by 松本ポン太 (2010-06-17 23:07) 

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