桂 枝雀 「代書」「親子酒」 [落語]

1週間前に近所のビデオレンタル屋兼書店で



隔週刊CDつきマガジン『落語~昭和の名人・完結編』1 二代目 桂 枝雀(壱)(小学館)

を第1回配本は490円と安かったので買った。
第2回配本以降は定価が1,190円に上がるし東京落語はあまりそそられないので、今後も枝雀、文枝、春團治など上方落語の巻だけ買おうと思っている。

第1回配本では『代書』『親子酒』の噺(はなし)がCDに収録されいる。
『代書』は先週の日曜日に1駅先の駅前のスーパー銭湯まで徒歩約3.5キロの道すがら、旧街道の街並みを通りながら聴いた。
今朝のウォーキングの帰りには『親子酒』を聴きながら歩いた。

『代書』は文字の書けない男が代書屋で就職のための履歴書を書いてもらうときのやりとりのボケ・ツッコミが可笑しい噺である。
『親子酒』は酒グセの悪い父親と息子を各々対称的に描いて、ラストで対面させるときのオチが面白かった。


故桂枝雀はボクが高校生の頃、TV番組『枝雀寄席』などでクラスメイトの間でもブームであった。
当時は同級生といっしょに朝日放送の『枝雀寄席』の公開収録に行って生で見聞きしてきたこともあった。
桂枝雀当人はとても知性的な落語家であったが、起伏・緩急に富み、オーバーアクションなどダイナミックにコントロールされた明快な落語で、まだ落語初心者だったボクも強く惹きつけられてテレビに釘付けになっていたものだ。
深くハマることはなかったが、落語を好きになるキッカケになった落語家で、その後は何回か米朝独演会に足を運んだ。

正直言って音だけで聴く枝雀落語も面白いのであるが、イマイチ物足りないものがある。はなしの間合いに起こる客席の爆笑の渦についていけないのだ。
枝雀の身振り手振りなり、顔芸なりを想像するしかない。
それでもウォークマンで聴く噺にクスクスしながら歩いている自分は、人から見るとさぞ変人に映るだろうなと思った。





桂枝雀『代書屋』
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映画「僕と妻の1778の物語」 [映画]

この3連休にウチでゴロゴロしているのももったいないし1日くらいはレジャーらしいことがしたい、妻に日帰り温泉にでも行こうかと誘ってみたのであるが、妻は寒い時期に温泉には行きたくないというので、久しぶりに映画を観に行こうかということになった。

とくに映画館に観に行きたい映画があったわけでもないが、「僕と妻の1778の物語」は竹内結子さんがちょっと気になっていたことと、数日前にテレビでこの映画のCMを見たのが心に残っていたので、この映画にした。

中1の息子も誘ってみたが、こういう映画は苦手だというので、妻と二人で観に行った。


車で大型ショッピングセンターに行って、そのなかのワーナーマイカルシネマでチケットを買ってから、書店で時間をつぶしたりベーカリーカフェで昼食を食べたりしてから、上映時間になった。

ポップコーンとウーロン茶を買ってから、ガラ空きの指定席に座った。


映画のほうは結末がわかっているし起伏に富んだストーリーでもないが、お涙頂戴になりそうなところを淡々とユーモラスに描いていて、感動というほど強いものはなかったが心に残るものがあった。

だんだんと弱っていく妻 節子を演じる竹内結子さんが美しく、彼女を支えているようで実は彼女に支えられている夫 朔太郎の姿もけなげであった。
ドラマの「僕の生きる道」シリーズも好んで観ていたが、朔太郎を演じる草彅剛さんは本作でも飄々とした味を出していた。
SF作家の朔太郎が毎日妻に書き続けるショートショートの、ロボット、宇宙船、宇宙人などファンタジックなシーンをところどころに挿入しているのが楽しい。

ボクはどうしても節子に自分の妻を重ねてしまう。もし妻がボクよりも先に余命いくらなどと宣告されたら、自分には何ができるだろうかと思った。
ボクは朔太郎のように毎日妻にショートショートを書いて笑わせることなどできないが、ときには寒いギャグや下ネタを飛ばして妻に「受け」狙いしている。そんな心情で朔太郎に感情移入していた。

レギュラーサイズのポップコーンが多過ぎて妻は少ししか食べなかったので、ボクはガツガツ食べながら観ていた。妻は泣くほどの映画ではなかったと言っていたが、登場人物や後ろの客のすすり泣きにつられて泣いていた。
ボクはそんな妻の手をギュッと握った。

ボクは妻の存在を今は当たり前のように思っていたが、この映画を観て妻と一緒に生きていられる幸せを実感した。
ボクの勝手な思いだろうが、妻には先立たれたくない。


「僕と妻の1778の物語」予告篇
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My Funny Valentine [ミュージカル]

かつて毎年この時期になると憂鬱であった。

ボクは社交的なほうではないし孤立していたことが多いので、もちろん女子から相手にされることがなくバレンタインデーは寂しいものであった。

高校生になってもボクには彼女はできなかったが、友人どうしで悪ふざけして、いかにもモテないヤツのクツ箱に女の子からのプレゼントに見せかけてバレンタインチョコレートを忍ばせた。
その同級生がニヤニヤしている様子を見て冷やかしたりして、ボクも仲間うちでほくそ笑んでいた。それこそfunnyなバレンタインだったが、彼に劣らずモテないボクは内心はとても寂しい気持ちだった。

その後も妻と出会うまでは毎年バレンタインデーの頃は憂鬱であった。
ひがみもあったが、何よりもこの期間はボクの大好きなチョコレートを男が自分で買いに行くのが屈辱的なことに思えて、こんな習慣をつくった日本の菓子メーカーを恨めしく思ったものだ。

それでも職場の義理チョコと保険の外交員のおばさんのサービスのチョコくらいはもらった。息子を可哀相に思ったのか母がくれたこともあった。
その後、女子社員は申し合わせて義理チョコを自粛し、保険会社もケチになってチョコをくれなくなった。

結婚後は妻が焼いてくれる「本チョコ」のチョコケーキが心の支えになっている。といっても今はボクだけではなく息子にも向けられたプレゼントである。
でもボクにも男のプライドがあって、ボクのほうから妻に「ちょうだい」とは言えない。

*      *      *


バレンタインデーというのはキリスト教司祭の聖ウァレンティヌス(=バレンタイン)が殉教した命日にちなんだといわれ、血塗られた謂れ(いわれ)があるようだ。
ローマ皇帝がローマ軍の兵士が出征したがらなくならないように、結婚や婚約を禁止していた。これに背いて聖ウァレンティヌスは、恋人たちをひそかに結婚させていたという罪で処刑された。
それ以来、恋人たちの守護聖人として信仰されてきたということらしい。

バレンタインデーに因んだ血生臭いエピソードとしては「聖バレンタインデーの虐殺」も有名である。
禁酒法時代のギャングの帝王アル・カポネが、警官に扮装させた殺し屋をガサ入れを装って敵のマフィアに差し向け、敵のアジトで数名を虐殺した事件で、TVドラマ「アンタッチャブル」やギャング映画では有名なシーンである。

*      *      *


そのようなバレンタインデーは好ましく思えないが、ジャズのスタンダードナンバー『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』"My Funny Valentine"だけはとてもいい曲だと思う。

作曲したリチャード・ロジャース(1902-1979)は、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』(1959)、『王様と私』(1951)、『南太平洋』(1949)、『オクラホマ』(1943)の作曲家として有名である。
「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は作詞家ローレンツ・ハート(1895-1943)と組んだミュージカル『ベイブス・イン・アームス』のナンバーで、ミュージカルそのものは有名ではないが、トニー・ベネットやフランク・シナトラのカバーでヒットして名曲になった。インストゥルメンタルではマイルス・デイビスもカバーした。


MY FUNNY VALENTINE
(music: Richard Rodgers, lyrics: Lorenz Hart)

(verse)

Behold the way our fine feathered friend
His virtue doth parade
Thou knowest not my dim witted friend
The picture Thou hast made
Thy vacant brow and Thy tousled hair
Conceal Thy good intent
Thou noble upright, truthful, sincere
And slightly dopey gent


(refrain)

You're my funny Valentine
Sweet comic Valentine
You make me smile with my heart
Your looks are laughable
Unphotographable
Yet you're my favorite work of art
Is your figure less than Greek
Is your mouth a little weak
When you open it to speak
Are you smart?
But don't change a hair for me
Not if you care for me
Stay little Valentine stay
Each day is Valentine's day!



この歌詞を自分なりに訳そうかと思ったが、英語の苦手なボクにはとくにverseの部分は格調高く古典英語も使っているそうで、慣用句などわからないので諦めた。
Yahoo翻訳、Excite翻訳など試みてもfunnyな訳になって、わけがわからなくなるばっかりなので、他の方のサイト

YouTube動画で覚えよう英語の歌  ゆうこ さん
My Funny Valentine 私のへんてこ…  かおりん・うさこ さん  

の訳などを参照されたい。


要するに女子が男子に宛てたラブ・ソングであるが、男子の名前がバルとかいって、それとバレンタインをかけていること。その男子のことをブサイクだ、こっけいだとこき下ろしながらも彼への想いを打ち明けている。

*      *      *


お気に入りのCDは前回の「オーヴェルーニュの歌」に続いて、フリッカ(=フレデリカ・フォン・シュターデ)のソプラノである。
フリッカの最盛期はカラヤン、バーンスタイン、小澤、アバド、プレヴィンなど有名指揮者から引っ張りだこであった。その反動からか最盛期を過ぎた頃に、もともと彼女の憧れであったミュージカルやポップスのナンバーも歌うようになった。

この頃のCDには

「サウンド・オブ・ミュージック」
「ショウ・ボート」

などミュージカル全曲録音がすばらしい。フリッカならではの清楚・チャーミングな歌唱で聴かせる。

"MY FUNNY VALENTINE"「マイ・ファニー・ヴァレンタイン~ロジャース&ハートを歌う」と題されたアルバムはロジャース&ハートのミュージカルから名曲を選りすぐったものである。
ジョン・マッグリン指揮ロンドン交響楽団のシンフォニックでときにはジャズっぽいオーケストレーションのなかで、オペラティックであったりミュージカル調の歌唱で、ゴージャスに聴かせている。彼女独特の中高音の優しく柔らかな声質も心地よい。

バラード調の曲は情感豊かな歌唱のなかで、ときどき聴かせる「笑い」がすばらしい。例えば"My Funny Valentine"はマイナーなしみじみとした曲調のなかにみせるfunnyな味わいが魅力的である。歌詞の"Is your mouth a little weak"の部分の"a little"の歌い方がとてもチャーミングでウルッとくる。
"Atlantic Blues"などの軽快なナンバーはとても明るく愛くるしい。YouTubeではこの"MY FUNNY VALENTINE"1曲だけがアップされていたが、他にもすばらしい歌唱が聴ける。



マイ・ファニー・ヴァレンタイン~ロジャース&ハートを歌う
 フレデリカ・フォン・シュターデ(メゾ・ソプラノ)
 ロンドン交響楽団
 ジョン・マッグリン(指揮)

1. My Funny Valentine
2. I Must Love You
3. I Didn't Know What Time It Was
4. Moon of My Delight
5. Ev'rybody Loves You
6. Ship Without a Sail
7. Quiet Night
8. To Keep My Love Alive
9. Love Never Went to College
10. You're Nearer
11. If I Were You
12. Bewitched,Bothered and Bewildered
13. Now That I Know You
14. Bye and Bye
15. Atlantic Blues
16. Where or When
17. Falling in Love With Love



他にもフリッカがよりポップス調で軽く歌ったアルバム"Flicka"もボクの愛聴盤である。
こちらはオペラっぽさをまったく感じさせない自然な発声で歌われているが、優しく柔らかい声にさわやかなお色気も加わって、とてもスウィートなヴォーカルである。聴いてもらえるサンプルがないのが残念である。



Flicka - Another Side Of Frederica Von Stade

1. I Like To Recognize The Tune
2. Spring Is Here
3. Play Me Your Light
4. Lullaby
5. I Could Write A Book
6. He Is My Man
7. Once Again
8. The More I See You
9. Wait 'Til You See Him
10. That's All
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