ジョルジュ・ムスタキ 「私の孤独」 [ポップス]
盆休み直前の水戸出張の晩に駅ビルのCDショップ「新星堂」で暇つぶししていたが、クラシックもジャズも品揃えがしけていて、そそられるCDがなかった。
ふとワールドミュージックの棚のシャンソンコーナーを見ると、ジョルジュ・ムスタキのベスト盤「私の孤独」があったので買った。
ボクはムスタキのファンでもフレンチポップス愛好家でもないが、ムスタキの「私の孤独」(Ma Solitude)だけは子どもの頃から心に焼きついた曲であった。
中学生の頃、TBSで「バラ色の人生」というドラマが放映されていて、その主題歌がムスタキの「私の孤独」であった。
ドラマのほうは、貧乏学生(寺尾聰)のアパートの一室に、ある日突然、謎のセレブ美女(香山美子)が押しかけてきて同棲生活を始める...といったエロい妄想を抱かせるようなシュチエーションに、中学生のボクはのめり込んで観ていた。
主題歌のほうは、ムスタキの流れるようなメロディのなかで淡々と語られるような歌で主人公の貧乏学生の心情を反映したような印象であった。この曲は当時はラジオのリクエスト番組などでよく流されていた。
ボクはこの曲に、レコードを買ったり、カセットにエアチェックするまでにはハマっていなかったが、心地よく、未だに頭から離れないメロディである。
あれから何十年も経って、なぜかつい最近、この曲やドラマのことを思い出して、インターネットで調べてみた。
主演の寺尾聰で調べているうちに、このドラマのタイトルがわかって、ドラマデータベースのサイトで詳細にたどり着くことができた(同じタイトルの韓国ドラマばかりヒットしたが...)。
主題歌はフランスの「ジョルジュ・ムスタキ」という歌手名だけは記憶していたので、YouTubeで「私の孤独」を観聴きすることができた。
フランス語の語感が美しいと思う以上に言葉の意味はわからないが、訳詞などを読むと、終始一貫「私はひとりぼっちではない、『私の孤独』と一緒だから」といった矛盾した内容で歌われている。
とても寂しい歌詞であるが、妙に開き直ったような明るさもある。
YouTubeで日本人シャンソン歌手の日本語の歌を聴いていると思わず涙が出てきた。
あくまでも曲想としては、大げさな「シャンソン」風の歌唱よりもフォーク調のムスタキの流れるような歌が好ましい。
ジョルジュ・ムスタキ(1934- )はエジプト生まれのギリシャ人でパリに渡って活躍したシンガーソングライターである。
1950年代からエディット・ピアフらに曲を書き、やがて自らも歌うようになったといわれる。人種差別、民主化、労働運動などを背景とした社会的なメッセージ性のある歌も歌っていたようである。
私の孤独~ベスト・オブ・ジョルジュ・ムスタキ
- 私の孤独
- 生きる時代
- ジョルジュの友達
- 幼年時代
- 傷心
- おじいさん
- 17歳
- もう遅すぎる
- 悲しみの庭
- 異国の人
- 若い郵便屋
- サラ
- ヒロシマ
- 僕の自由
- ポルトガル
- 内海にて
- 希望
ベスト盤のなかでもなんといっても「私の孤独」が秀逸だと思う。「異国の人」はフランスで大ヒットした歌らしい。全体的に60-70年代風のフレンチポップスをフォーク調にシンプルにした感じで、ボサノヴァ風の曲も多い。アレンジなどから何となくジャニス・イアンにも通じるような曲調に思えた。